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白杖(はくじょう)

今朝、電車に乗っていた
乗っている電車が、次の高速神戸駅止まりで 
終点の乗り換え駅に すべるように ゆっくりと 入っていった
ブウーン、ブウーン、ガタン と電車が止まった
ドアーがプシューンと 開いて 乗客が ざわめいた。
しかし 一瞬 ほんの一瞬 乗客の動きがたじろいだ
降りるはずの乗客が 時間が止まったように たたずんだ


その一瞬の後 何事もなかったかのように
前の乗客が 右に左に ホームに降りてゆく
さっきの 沈黙の時間がうそのように、
みんな、脱兎(だっと)の如(ごと)く 降りてゆく
左右に分かれた その真ん中の スペースに
今まさに ドアーから 降りようとする 僕の目の前に 
白杖の女性が 凛(りん)として 立っていた
私は、合点(がてん)した
そういうことだったのか
みんな、ええとこあるやん


その電車は すぐに回送電車になり 
進行方向と反対のほうに 出て行った
プラットホームには 私と その女性と 
あと、何人かの乗客が その女性を 取り巻くように
次の 電車を待っていた


位置関係からすると 私は あえて少し 離れて立っていた
なぜなら、あと、2駅 特に座る必要もなかったし
むしろ 最後に乗るほうが 早く降りられるのを狙っていた


白杖の女性の 右には おばさん
左には ケータイいじっている 若いOL
これで、安心と 私は、思っていた


まもなく 次の電車 阪神「梅田行き」 特急が入ってきた


ドアーが、まさに開く瞬間まで 私は、待った
でしゃばりたくなかった
だって、いつも 白杖の人に 声をかけているから
両眼とも、レーザーで手術をしている私には 
決して 他人事(ひとごと)ではないから
今日ぐらいは ほかの人に譲りたかった
でも もう ドアーが開く


仕方がない
大急ぎで 近づくと
「すみません お手伝いしましょうか?」

僕のせいで ほかの乗客は 身動きできなくなった
その女性は「はい」と言った

私は 彼女のひじを 引いて 真っ先に電車に 乗ると
すかさず 訊いた(きいた)
「遠くまでですか?席もあいていますよ」 と
今乗り込んできた客が 先を争って 座ってしまわないように
少しだけ、大きな声で訊(き)いた
すると、女性は 近いから いいですと かぼそい声で言った


私は、彼女を 入り口の 手すりにつかまらせると
少し後ろに下がって その後は 何もしゃべらないまま
2つ先の 元町駅で 反対のドアーから降りた


ねえ、お願い
いい気持ちだよ
誰かの役に立つことは
それがどうして できないんだろうね

教えてやろうか

やらないから、できないんだよ


こんないい気持ちのことは独り占めしたくない
お願い みんなで やって


自分の おじいさん、おばあさんが と思ったら
自分の 親や兄弟 彼女や 彼氏かも知れない
ましてや 自分の可愛い子どもかも
お願い 社会の弱者を 守るほうに来て
本当に 強いのは 弱いものを守れることだよ


小さなことだよ
でも言うだけで、みんなできない
逆の立場になったとき
あなたは本当にそれでいいの?
今のままで

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コメント

この間、初めて白杖の人に声をかけることができました。声をかけてみると、今までたった一言「お手伝いしましょうか?」と言うだけのことができなかった自分が不思議に思えました。

投稿: ゆかこ | 2010年10月22日 (金) 22時16分

教えて頂いたソーシャルワーカーさんのブログで
「自覚者=責任者」という言葉を見つけました。

気付くだけで何もしないのは無責任であることと同じ。

投稿: ぬ | 2010年5月20日 (木) 22時39分

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